月別アーカイブ: 1月 2023

日本歯科医師会会長選挙特集 次期リーダーへの道(5)政策の論点1 国民皆歯科健診

 今回は7年ぶりの会長選挙となり、立候補者が複数のため政策で競う活発な論戦が期待される。論点はいくつかある。高橋英登氏、小林慶太氏、柳川忠廣氏(届出順)の三氏の政策のキーワードは「シンクタンク」「医療DX」「組織改革」「歯科医院経営」「国民皆歯科健診」など。  「シンクタンク」はそれぞれが描く機能のイメージが異なるのであらためて整理したい。「組織改革」については小林氏が具体的な方法を示して面白い。「歯科医院経営」は改定財源の確保に論点をまとめた高橋氏がわかりやすい。  「国民皆歯科健診」に対するスタンスは三者三様。高橋氏は骨太の方針に始まり令和5年度予算案に盛り込まれたことに強い期待を寄せている。小林氏は政策を日歯の役割と改善点に絞り込み、あえて国民皆健診に触れていない。柳川氏はさまざまな場面で、治療に繋がらなければ意味がないこと、予算案は執行されて意味があることなど問題点を厳しく指摘している。  「国民皆歯科健診」をどのように評価することが適切なのか。職域代表の自民党参議院議員、山田宏氏は6月26日に行われた日本歯科医師連盟の定例記者会見の席で、次のように考えを示している。 山田 昨日25日に行われた「自民党国民皆歯科健診実現プロジェクトチーム」の会合で協議された内容についてお話しします。テーマは2つ。まず来年度予算案に「国民皆歯科健診」の関連予算が5億4300万円ついたこと。この内容について厚労省から説明を受けました。もうひとつはこの健診を確実に推進するための法改正の考え方を議論しました。予算案の中では「歯周病等スクリーニングツールの開発支援」に2億円の予算がついたことに国の本気度がうかがえます。診療につなげる指導のあり方を検討するための予算も盛り込まれています。課題は〝皆歯科健診〟ですから全世代を対象にどのような仕組みを作るか、そして口腔と全身の健康の関係について国民の理解を得られるかです。昨日は法制化について議員立法を視野に議論をしたところです。6月21日までの通常国会の中で議案提出することを目指しています。  健診を診療につなげるのは当たり前のことで、そのための検査のあり方をこれから検討していくわけです。そして、予算がなければ執行率もへったくれもない。まずは予算を取ることが先で執行率については使いやすい制度に設計する厚労省の仕事です。これからモデル事業等を通じて実現までの課題を詰めていくわけですから、治療につながらないような健診は意味がないというのは論理が逆転しているのではないですか。

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日本歯科医師会会長選挙特集 次期リーダーへの道(4)三者三様の選挙戦

 選挙活動が活発になる中で大きく注目を集めたのは、まず1月8日の柳川忠廣氏の「東京応援集会」に日本歯科医師会の現職の会長である堀憲郎氏が出席して柳川氏の支持を表明したこと。堀会長は昨年秋の記者会見で勇退を明らかにしたのち「後継指名はしない」と述べていた。この日、登壇した堀会長は発言時間の大半を自身が会長に就任してからの功績に費やしたのち、結びに昨秋の会見について「公式の記者会見において『現職の会長が次の会長はこの人に指名する』といったことはできる仕組みではないしそんな権利は会長にない」とした上で、「個人の考えが基本でありますし、候補者の説明、考え方を理解した上で判断をしていただくことを前提に申し上げますが、これからの歯科医師会の舵取りを柳川先生に担っていただきたいと強く期待します」と述べた。これは要するに後継指名である。  もうひとつ注目を集めたのは、1月15日の高橋英登氏の集会に元日本歯科医師会会長の大久保満男氏が登場して高橋氏の支持を明言したことだ。大久保氏は柳川氏と同じく静岡を地元とすることから、一部では柳川氏を支持するのだろうと思われていたため、その反響は大きかった。大久保氏は「いまの時代がどのような会長を求めているのか」ということを論拠に「保険診療中心の歯科が低迷する現状を打開するには〝正当な政治力〟を駆使して予算を確保することが必要」として、高橋氏の日歯連盟会長としての実績と行動力に対する期待を述べた。  一方、組織的な支援を受けない小林慶太氏は、二人とはまったく異なる手法で政策の周知に努めていた。小林氏は1月22日の夜、『日歯改革を語る』と題してZOOMでライブ配信を行い、チャットで上がってくる質問に次々答える形でおよそ60分にわたって自信の考えを明らかにした。  かつて日歯会長選挙は学閥等の影響を廃してより多くの会員の声を反映させるために、選挙人を約100人から約650人に拡大する制度改革を行った。とはいえ、いまだ全会員の1%に過ぎない。小林氏の手法であれば、全会員に直接政策や主張を訴えることができる。さらにオンライン投票であれば、全会員による直接選挙も理論的には可能になり選挙にかかる経費も格段に縮小する。いつまでも「セキュリティが心配」「設備のない会員がいる(スマホもない?)」と時代遅れなことを言っていては改革は前に進まない。

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日本歯科医師会会長選挙特集 次期リーダーへの道(3)

 地方での動きは別として、選挙に関して公式にリリースされたものを時系列に沿って整理すると次のようになる。 ▼2022年9月29日…定例記者会見で堀憲郎会長が勇退を表明。柳川忠廣氏が立候補の意思を表明。 ▼2022年10月13日…高橋英登氏が東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで出馬表明の記者会見。一人で会見に臨み、所信表明ののち質疑を受けた。 ▼2022年10月27日…柳川忠廣氏が東京・市ヶ谷のアルカディア私学会館で出馬表明の記者会見を開催。7県の会長、奥羽大学歯学部同窓会会長らが出席した。 ▼2022年11月7日…小林慶太氏が東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで出馬表明の記者会見。一人で会見に臨み目指す政策を説明して質疑を受けた。 ▼2022年11月23日…柳川忠廣氏の後援会「廣楠の会」が「ホテルアソシア静岡」で総決起大会を開催。約230名が参集した。 ▼2022年12月4日…高橋英登氏を支援する「チーム高橋」の発足集会がホテルメトロポリタンエドモントで開催。140名を超える支持者が出席した。 ▼2022年12月7日…歯科記者会が東京・市ヶ谷のアルカディア私学会館で三氏の共同記者会見を開催。ライブ配信で立候補した理由、目指す政策の詳細が明らかにされた。 ▼2023年1月8日…奥羽大学歯学部同窓会が柳川忠廣氏「東京応援集会」を富士ソフト秋葉原ビルで開催。190名が出席(主催者発表)。6大学同窓会の代表者が応援スピーチ。日歯・堀憲郎会長が支持を表明。 ▼2023年1月15日…「チーム高橋」は1月15日、ベルサール飯田橋駅前で『高橋英登君に日歯再生を託す会』決起集会を開催。300名を超える支援者が参集。16都道府県の歯科医師会・連盟の代表者が支持を表明。日歯・元会長の大久保満男氏が支持を表明。 ▼2023年1月22日…小林慶太氏が「日歯改革を語る」ZOOMライブ配信。

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日本歯科医師会会長選挙特集 次期リーダーへの道(2)

◆当選までの流れと選挙活動  日本歯科医師会会長予備選挙の正式な手続きとスケジュールは次の通り。  まず、昨年10月末に選挙人が選出された。選挙人は142人の日歯代議員に加え、全国の都道府県歯科医師会で選出された492人の選挙人、あわせて634人からなる。当選の条件は有効投票総数の過半数を獲得すること。12月2日に選挙の実施が公示され、今年1月6日から11日の間に、高橋英登氏、小林慶太氏、柳川忠廣氏の順に三氏が立候補の届出を行った。  11日以降、三氏の演説映像が20日まで選挙人に公開されたのち、2月3日に投票用紙が発送され、2月14日に郵送投票を締め切り開票が行われる。もし三氏のいずれも過半数を満たさなければ上位2名による再投票が行われ、3月3日に締め切り開票が行われる。  この結果は3月16日の代議員会で報告され、4月17日から19日の期間に当選者が理事・監事候補者を提出。6月15日の定時代議員会で理事・監事が選任され、翌16日の定時代議員会終了後に第1回理事会が開かれて代表理事(会長)が選出される。  現在の会長選挙制度は、臼田執行部当時の不祥事を背景に平成16年に「日歯改革検討委員会」(水野肇委員長)を設置して協議し、広く会員の意向を反映することを目的に当時140人だった選挙人を大幅に増員し、平成18年から新制度を始めて現在に至っている。したがって、立候補者が自分の政策を選挙人に周知させるためには、以前より多くの時間とエネルギーが必要になった。今回の選挙では3人の候補者がいつからどのような方法で選挙活動を進めているのか。  三氏の中で公式の場で最初に口火を切ったのは、昨年9月29日に行われた日歯定例記者会見の質疑の中で立候補を表明した柳川忠廣氏だった。(つづく)

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日本歯科医師会会長選挙特集 次期リーダーへの道(1)

 日本歯科医師会の会長選挙が7年ぶりにおこなわれる。日本歯科医師連盟の違法献金事件を背景に堀憲郎会長による執行部が発足して以降、初の選挙となる。会長予備選挙に立候補したのは届出順に、高橋英登氏、小林慶太氏、柳川忠廣氏の三氏。プロフィールは次の通り。 ◆高橋英登氏(写真中央) 1951年生 70歳。日本歯科大学卒業。井荻歯科医院(東京都杉並区)開業。東京都杉並区歯科医師会会長、東京都歯科医師連盟会長を歴任。2015年より日本歯科医師連盟会長に就任し現在に至る。 ◆小林慶太氏(写真左) 1957年生 65歳。東京歯科大学卒業。松葉デンタルクリニック(千葉県柏市)開業。日本歯科医師会常務理事(学術・国際渉外・学会)、日本歯科医学会常任理事等歴任。2021年より国際渉外委員会委員に就任し現在に至る。 ◆柳川忠廣氏(写真右) 1954年生 67歳。東北歯科大学(現奥羽大学歯学部)卒業。柳川歯科医院(静岡県浜松市)開業。静岡県歯科医師会・同歯科医師連盟会長を歴任。2016年より日本歯科医師会副会長に就任し現在に至る。  昨年12月7日には歯科記者会主催で当時立候補を表明していた三氏による共同記者会見が行われ、それぞれの政策が示された。この会見の動画は歯科記者会加盟社のホワイトクロス社が、投開票がおこなわれる2月14日まで無料で配信しており何度でも視聴できる。これからの歯科界の行方を左右するリーダーはこの中から選ばれる。 ※無料視聴ページ https://www.whitecross.co.jp/events/view/2687

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